St. Mary's Cathedral, Tokyo | 1964
東京カテドラル聖マリア大聖堂
- 設計者 : 丹下健三・都市・建築設計研究所
- 竣工年 : 1964年
- 所在地 : 東京都文京区関口三丁目16番15号
設計者は丹下健三氏(1913-2005)。
20世紀を代表する建築家の一人で「世界のタンゲ」と呼ばれ活躍した建築家である。日本の伝統的なスタイルとモダニズムを融合させた建築様式で高く評価され、公共施設など大規模建築を数多く手掛けたことで知られる。
そんな丹下氏が壮年期に手がけた「東京オリンピック国立屋内総合競技場(正式名称:国立代々木屋内総合競技場)」に並ぶ名作がこの「東京カテドラル聖マリア大聖堂」である。
両作品ともに、当時の最先端の構造技術を踏まえながらも独自性を見出し、国立屋内総合競技場では吊り構造を、東京カテドラル聖マリア大聖堂ではHPシェル構造(※)を用いた。
※「シェル構造」とは鉄筋コンクリート製などの薄い曲面板を、1枚または数枚組み合わせて空間を覆う建築構造。また「HP」とはハイパボリックパラボロイドの略で、双曲放物線面のことを指す。
東京カテドラル聖マリア大聖堂はHPシェルの現代的な構造技術を用いながら、空から俯瞰すると立体的な十字架の形になっているというキリスト教・カトリックの大聖堂。
一般的な西洋の教会は街路から直接入堂するが、この東京カテドラル聖マリア大聖堂はまず正門を入って敷地内を西側に進んでから大聖堂の正面入口前へ繋がるよう動線が設計されている。
内部に入ると、コンクリート打ち放しの大空間。天井を見上げると、巨大な十字架型の天窓。柱が1本もない造りが特徴となっている。
構造設計を担当したのは坪井善勝氏。国立屋内総合競技場、大阪万博お祭り広場、香川県庁舎など多くの丹下作品の構造設計を担当している丹下健三氏の名パートナーだ。
東京カトリック大聖堂の設計に際し、丹下氏は「一つの精神的内容を、現代的状況と条件のなかに、現代的建築技術をもって、どのように一つの空間に象徴していくか」という新しい課題にぶつかったと語っている(※)。カトリックの精神をどう理解しどう建築空間に投影するか…。
象徴化は抽象化とも似た感じをもって理解されることがあるが、丹下氏は全く反対の過程であると語る。「抽象化が意味を捨象していく過程だとすれば、象徴化は意味をより具体化してゆく過程であるともいえるだろう。」
丹下健三氏は大聖堂設計の功績により、1970年(昭和45年)にローマ教皇庁からサン・グレゴリオ・マンニャ勲章を授与された。
※ 丹下健三・著「建築と都市」より
- 構造形式 : 鉄筋コンクリート造(外装仕上:ステンレス・スチールおよびアルミニューム・サッシ)
- 階数 : 地上1階(中2階・中3階)、地下1階
- 高さ 39.4m(本体)、61.7m(鐘塔)、長さ 55.5m、幅 40.7m